上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
- --/--/--(--) --:--:--|
- スポンサー広告
-
-
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
薄暗い洞窟の中、亜矢は荒い息を吐きながら肩を震わせる。
銀色の剣を片手に持った少女の周囲には、幾つものゴブリン鬼や大きなネズミの死体が転がっていた。

「よしよし!いい感じだぞ、亜矢。この感じで殺しまくれ!」
銀色の剣、Lilarcorはさも愉快そうに叫んだ。

汗で額にまとわりついた髪をかき上げながら、亜矢は眉をひそめる。
「あのねぇ、そんなにうれしそうに言わないでよ。生き物殺すのは気が咎めるんだから」
「クククッ、次は何だ?トロールか?ミノタウロスか?何でもオレが切りまくってやるぜ!」
「・・・全然聞いてないし・・・」
亜矢は目を伏せて死体から離れた。
暫く洞窟を進むと人の声が聞こえてきた。

壁が崩れ、そこから石造りの建物が見える。牢屋から隠し扉でつながっていた石のアーチの地下迷宮のようだ。声はそこから聞こえてくる。

「助け?暗殺者どもがこんなにも多く入り込んでいるのに、助けがくると思うか?我々が皇帝をお守りするのだ」
牢から脱出した皇帝と兵士たちのようだ。亜矢はその声を聞いて、迷子が母親を見つけたように顔を輝かせて走りだした。

「待って!お願い、私も連れて行って!」
声のする方へ走りよりながら、亜矢は叫んだ。
だが、待っていたのは、もちろん暖かい言葉などではなかった。

「畜生、またあの囚人だ!殺せ!暗殺者の仲間かも知れんぞ」
皇帝を守る兵士の一人が叫んだ。
その叫びに亜矢はビクリと足を止め、体を凍らせる。

「いいや、この者は一味ではない」
皇帝が片手を挙げ、兵士達を制する。

「彼女は我々を助けてくれるのだ。いや、助けねばならないのだ」
皇帝の声色は何かを確信しているような、力強いものだった。
「側に来い。大声で話してはまずい」
亜矢は、その言葉に一瞬躊躇する。そして深いため息をつき、静かに皇帝の側へと近づいた。

「彼らには私がそなたを信じる理由が分からないだろう。そなたを初めてみたのだから」
近づいた亜矢に皇帝は密やかに話しかける。
「何と説明すれば良いのか・・・」
年老い、無数の皺が深く刻まれた顔を曇らせ、皇帝は言葉を探す。

そして真っすぐに少女を見つめ、
「よく聞くのだ」
と低い声で、だが強い口調で語りだした。
「Nineを知っているか?Nineはいかにして、その見えざる御手で我らを導いているのだろうか?」
この世界の住人ではない亜矢には全く知りえないことだったが、じっと老皇帝の次の言葉を待った。
「私は生涯、Nineにお仕えしてきた。そして天の運行から自分の進むべき道を決めてきた。天空には無数の光が瞬き、その一つ一つが炎であり、その全てが啓示なのだ」
そういうと、皇帝は目を閉じた。想い描いているのは何であろうか。
「星々は我が終焉を告げていた。私の死は必然であり、間もなく訪れるであろう」
皇帝は一瞬、悲痛な表情を隠しきれなかったが、再び目を見開き、亜矢を射すような視線で捉えた。

「だが、そなたの顔には太陽の輝きが見える。Akatoshの栄光の光が、迫り来る闇を振り払ってくださるかもしれない」
老皇帝は、少女に希望を見出していたのだ。
とても大きな運命の星が自分に降り注ぐのを感じ、亜矢は体の奥から何か不思議な力が湧くのを覚えるのだった。
~続く~
<<第5話 第7話>>
- 2009/03/21(土) 00:04:50|
- TES Sumner's Tales
-
| トラックバック:0
-
| コメント:7