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扉を開けると、薄汚れた石の壁とジメジメとした土の天井が続いていた。
むっとする異様な臭気が漂うそこは、壁のわずかな崩れからかすかに光が差し込んでいるが、松明がなければほとんど何も見えない。
「う~なんか、鈴木土下座衛門とかできそう・・・」
「・・・なんだそりゃ」
「ねぇ、ホントにここを進むの?」
「オマエ、ずっとここにいたいのか」
亜矢はぶるぶると顔を横に振る。
「まぁ、オレとしてはもっと血の気の多い奴に拾われたいからな。マッチョな傭兵とかイカレた盗賊とかさ。オレを使って殺しまくってくれそうな奴」
「悪かったわね、か弱い女の子で。なんなら置いていっても良いけど?」
「わかったわかった。まぁでも、手ぶらで行ったらオマエも死ぬぜ?」
「ギブアンドテイク・・・ね」
「そういうことさ。ほら、臭い奴が来てるぜ」
「え?」
それは腐乱した人の死体だった。それがこちらに向かって歩いてくるのが松明の明かりに照らし出された。
「なっ、何あれ?!」
「何でもいいから構えろ」
亜矢はコクコクとうなずくと慌ててしゃべる剣を構える。
「うぁぁ、キモイ・・・」
酷い臭いを伴なって腐乱死体はまっすぐこちらに向かってくる。
「・・・やっぱりわたし殺して仲間でも増やすつもりかなのかな?」
「オマエ、意外と余裕あるな」
「ううん、もう逃げても無駄っぽいし」
亜矢はひきつった笑みを浮かべて体を震わせていた。
「・・・”炎の剣”に変わってやるから、ほら、振りかぶれ!」
「きゃぁぁぁ!ゾンビになるのはいやぁぁぁ!」
悲鳴を上げながら亜矢は剣を目いっぱい持ち上げて、思いっきり死体へ叩きつけた。
その瞬間、ゾンビが燃え上がった。
「ひゃあっ!?な、なにこれ!?」
火達磨になったゾンビはそのまま後方へと吹き飛んだ。
「なっ、なにをしたの!?」
「だから言ったろ、”炎の剣”だって」
「君・・・すごいんだね」
「まぁね。あと、”氷の剣”と”雷の剣”、それから”衝撃の剣”にもなれる。ついでにサイズも変えられるし、オレ自身も呼び出せる」
「君自身?」
「幽体だけど一緒に戦えるぜ」
「・・・もしかして、君って伝説の剣とかだったりする?」
「さぁね。オレはオレさ。そんなことより、さっさと進もうぜ。こんなところでモタモタして、餓死してもらっても困るからな」
「う、うん」
・・・
・・・
・・・
「松明消せ、亜矢」
「うん?」
ダンジョンをしばらく進んだところでLilarcorが不意にいった。
「ねぇ、今度はなにあれ」
「ゴブリンだな。まだこっちに気づいていないようだから、後ろからズバッとやっちまえ」
「君、ホントに人でなしだ・・・」
「言っておくが、話し合って分かり合えるような輩じゃないぜ?オマエが姿見せた途端、襲ってくる」
「ホントに?」
「ああ。オマエは多分、死ぬほど犯された挙句に食われるな」
犯されると聞いて亜矢は見る見る顔を青ざめさせた。
男達から受けた陵辱の記憶がよみがえる。
「おい、大丈夫か?震えてるぞ」
「・・・大丈夫・・・じゃない・・・よ・・・」
「何があったか知らねぇけど、このCyrodiilじゃ甘い考えは捨てな。ヤベェ生き物がそこらじゅうウロウロしてるし、街道じゃ盗賊が身包みはがそうと待ち構えてるぜ?」
「・・・う・・・うん・・・」
「よし、短剣に姿変えるから、サクッと殺っちまえ」
「・・・あのさ、ホントに君が殺したいだけってこと、ないよね?」
「それなら世話はないけどな」
大剣は短剣の姿に変わった。
「どうだい?」
「・・・もう、なんでもありだね。頭がクラクラするよ」
亜矢は自分の身に起っていることが、どれだけ非常識なことなのかを改めて思った。
「まぁな、こんなことができる剣は、オレだけだから」
「そういう問題でもないんだけど・・・」
「よし、震えはおさまったな」
「あ・・・」
「殺られる前に殺るんだ。日本とやらに帰りたいんだろ?何がなんでも生き残れ」
「・・・わかったよ」
亜矢は音を立てないよう、慎重に標的に近寄っていく。
その醜悪な生き物の真後ろまできたとき、亜矢は「ゴメンネ」とつぶやいて短剣を一振りした。
その瞬間、ゴブリンに凄まじい電撃のようなものが走り、その生き物は断末魔を残して横へと吹き飛ぶ。
「きゃぁぁぁぁぁ!」
「おいおい、オマエまで悲鳴あげることないだろ」
「だ、だって、ビックリしたよ!」
「不意打ちだったからさ。今みたいなヘナチョコな一撃でも4倍はダメージを与えられる。・・・雷をついでに加えたしな」
剣はくくっと含み笑いをした。
「・・・もう。君をこのまま持ち出して良いものか悩むよ・・・」
~続く~
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- 2008/11/07(金) 00:22:44|
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